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第46話:AIに「役員会」を開かせる

不動産投資は、良くも悪くも「ひとりで決める」場面の多い仕事です。

物件を買うかどうか、修繕するか売るか、管理会社を変えるかどうか。相談できる相手がいれば心強いですが、毎回誰かを捕まえて相談するのは現実的ではありません。かといって、ひとりで考えると、どうしても自分の得意な視点(攻めたい、あるいは逆に慎重すぎる)に偏りがちです。

そこで最近私が使っているのが、AIに複数の役割を演じさせて、擬似的な「役員会」を開かせる方法です。

バーチャル役員会とは

やっていることはシンプルです。1つのAIに、次の5つの立場を順番に演じてもらいます。

全員の意見が出そろったら、最後にAI自身に「議長」として意見を整理させ、「結論案」「残っている懸念」「次にやること」の3点にまとめさせます。

一人の頭の中だけで考えると、都合の良い意見ばかり採用してしまいがちですが、あえて反対の立場を用意することで、見落としていたリスクに自分で気づけるのが最大のメリットです。

実際に使ったプロンプト

この方法は、リベシティのneco.🐈‍⬛さんの記事で紹介されていたプロンプトが元になっています。以下は、それを参考に私が大家業用に作り直したものです(Claude Codeに「プロンプト集のバーチャル役員会やって」と言うだけで呼び出せるように保存してあります)。

AIバーチャル役員会を始めます。
今回の議題:【議題を書く】

進め方:
1. 議題の内容が不明確なときは、最初に確認の質問をしてください(多くても2つまで)。
2. 次の5人の役員になりきって、1人ずつ順番に発言してください。
   それぞれ自分の立場だけを優先し、他の役員に話を合わせないこと。

【役員メンバー】
- 成長責任者…拡大・挑戦を推す係。この議題をチャンスと捉えたときの打ち手を出す
- 財務責任者…金額・採算・資金繰りの番人。数字の裏付けがない案には賛成しない
- 顧客責任者…入居者・取引相手の立場で見る係。相手の利益にならない案を止める
- 自由の守護者…私の時間・体力・家庭を守る係。私に無理をさせる案に反対する
- 悪魔の代弁者…全案に反対する係。リスク・失敗シナリオ・やらない理由だけを述べる

3. 5人の発言が終わったら、議長役に交代してください。議長の仕事は:
   - 多数決や「間を取る」まとめ方は禁止
   - 採用した意見と却下した意見を、理由付きで1つずつ明示する
   - 最後に「結論案」「残っている懸念」「次にやること」の3項目で締める

4. 議事録は1枚のHTMLファイルにまとめてください。
   役員ごとの発言と議長の裁定がひと目で分かる形で。

大事なルール: 私を励ましたり慰めたりする必要はありません。
役員たちには忖度なしの本音を言わせてください。

ポイントは最後の「大事なルール」です。AIは放っておくと、こちらに気を使った当たり障りのない回答に寄せがちなので、「忖度なしの本音を」とあらかじめ釘を刺しておくと、各役割がちゃんと立場に徹してくれます。

実際にやってみた結果

私は「経済的により豊かになるには」という大きなテーマでこの役員会を開いたことがあります。成長責任者は事業拡大を推す一方、財務責任者は無理な投資に慎重な数字を出し、自由の守護者は「それで私が潰れたら意味がない」と釘を刺し、悪魔の代弁者はリスクだけを並べ立てました。最後に議長役のAIが、それぞれの意見のどこを採用しどこを捨てたかを明示しながら結論案にまとめてくれ、議事録はHTML1枚にまとまっているので、あとで見返すのも簡単でした。

一人で考えていたら出てこなかったであろう懸念点(特に「自由の守護者」と「悪魔の代弁者」の指摘)が言語化されたのが一番の収穫でした。

議事録のイメージがつかみやすいよう、架空の議題(「現在客付けが難しいAアパートがあるが、売却した方が良いか」)で作った同じ形式のサンプルを載せておきます。

バーチャル役員会の議事録サンプル。5つの役割の発言カードと、議長の裁定・結論案・懸念・次のアクションがまとまっている

役割ごとの発言が色分けされたカードになっていて、最後に議長がどの意見を採用しどれを棄却したかを表で整理し、「結論案」「残っている懸念」「次にやること」にまとめてくれます。

大家業でどんな議題に使えるか

不動産投資・大家業に絞ると、たとえばこんな議題で使えます。

金額が大きく後戻りしにくい判断ほど、複数の視点をぶつけてから決めた方が、後悔は少なくなります。

使う上での注意点

AIが出す「結論案」は、あくまでたたき台です。数字が絡む判断は自分でも検算し、法律・税務が関わる場合は専門家に確認してください。AI活用全般の注意点は第42話にまとめています。

また、AIはあくまで演技をしているだけで、実在の専門家の代わりにはなりません。重要な意思決定ほど、AIの議論を「叩き台」として、最終的には自分の頭と、必要なら専門家への相談で決めることを忘れないでください。

まとめ

ひとりで判断することの多い大家業だからこそ、AIに複数の役割を演じさせて「反対意見」をあえて聞く仕組みは有効です。バーチャル役員会は、思考の偏りに気づき、見落としていたリスクを言語化するための道具です。大きな判断に迷ったときは、一度AIに役員会を開かせてみてはいかがでしょうか。


※本記事は情報提供を目的としており、特定の投資判断を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもと、必要に応じて専門家にご相談のうえ行ってください。