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第26話:【豆知識】借地借家の争いと裁判所——調停前置主義と管轄の仕組み

借地借家に関連するトラブルが起きたとき、まず出てくるのが「調停前置主義」というルールです。

これがなぜあるのか、なぜ「簡易裁判所」なのか「地方裁判所」なのか、ここでは正確に整理します。

なぜ「調停」から始まるのか

借地借家の特定の争いでは、調停前置主義というルールが適用されます。これは、裁判所に訴訟を起こす前に、まず調停を試みなければならないという仕組みです(民事調停法24条の2)。

このルールがある理由は、借地・借家の関係は当事者間で長期間つながることが多いからです。いきなり訴訟で白黒つけるより、話し合いで解決したほうが双方にとって望ましいという考え方に基づいています。

調停前置主義の対象になる案件

調停前置主義が法律で明示的に義務付けられているのは、主に次のケースです。

案件 内容
地代の増減額請求 地主が「地代を上げたい」、借地人が「下げてほしい」と争う場合
家賃の増減額請求 家主と借家人の間で家賃の増減をめぐる争い

ポイント:「賃料の増減」をめぐる争いがメインです。

似ているけれど別物:「借地非訟事件」

借地に関する争いには、もうひとつ別の手続きがあります。

案件 手続き
借地条件の変更 借地非訟事件
建物の増改築許可 借地非訟事件
借地権の譲渡承諾に代わる許可 借地非訟事件

これらは 借地非訟事件(借地借家法17条等)として、調停を経ずに直接、地方裁判所に申立てができる特別な手続きです。

調停前置主義の対象ではない、という点を押さえておきましょう(実務では話し合いから始めることも多いですが、法律上の義務ではありません)。

もし調停を飛ばして訴訟を起こしたら?

調停前置主義の対象なのに、調停をスキップしていきなり訴訟を起こした場合、裁判所が職権で調停に付す(強制的に調停手続きに戻す)ことができます(民事調停法24条の2第2項)。

そのため、実質的に「いきなり訴訟」は認められません。

ただし、調停に付するのが相当でないと裁判所が判断した場合は例外があり、必ずしも機械的に戻されるわけではありません。

調停が不成立になったとき

調停では、当事者の合意が成立しなければ「不成立」となり、手続が終了します。

調停不成立後は、事件の類型に応じて、訴訟や別の手続に進みます。

たとえば、相手側が借地権の存在を否定し、調停にも出席しなかった場合、調停は不成立となります。その後は通常訴訟(地方裁判所等)に移行することになります。

管轄裁判所|どの裁判所が扱うのか

ここが意外と混乱しやすい点です。手続きの種類ごとに管轄が違います

手続き 原則の管轄裁判所
民事調停(地代・家賃増減等) 簡易裁判所 が原則(合意で地方裁判所も可能)
借地非訟事件(条件変更・増改築許可・譲渡許可) 地方裁判所 が原則(合意で簡易裁判所も可能)
通常訴訟 訴額140万円以下 → 簡易裁判所訴額140万円超 → 地方裁判所

調停は簡易裁判所が原則です(民事調停法3条1項)。一方、借地非訟事件は内容が専門的なため、地方裁判所が原則となっています(借地借家法41条)。なお、いずれも当事者の合意があれば例外的に別の裁判所でも扱えます。

まとめ|借地借家の争いと裁判手続きのポイント

ポイント 内容
調停前置主義 地代・家賃増減額請求など、特定の案件はまず調停を経る必要がある
調停の意義 継続的な関係を考慮し、話し合いで解決を促す
借地非訟事件は別物 条件変更・増改築許可等は地方裁判所への直接申立てが可能
調停不成立後 事件類型に応じて訴訟へ
管轄 民事調停は簡易裁判所が原則、借地非訟は地方裁判所が原則(いずれも合意で例外あり)

借地借家のトラブルは、特別なルールが絡むことが多いです。

「調停から始める案件なのか、それとも借地非訟事件として直接申立てできる案件なのか」「どの裁判所に持ち込むのか」を正しく理解しておくだけで、手続きの混乱を防ぎ、スムーズに進めることができます。

困った時は、弁護士など専門家に早めに相談するのが最善です。


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